[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」


 


8.31 「武蔵野市交通バリアフリー基本構想について 〜意見交換会」報告

「住民参加と基本構想」
 お話:川口仁志さん(あふネット 代表

*あふネットの紹介

 あふネット(あらかわ福祉ネットワーク)は、障害の種別や立場をこえて、バリアフリーの社会と福祉の向上をめざして活動しています。バリアフリーは、今回の交通バリアフリー関係だけではなく、情報、制度、意識(こころ)のバリアフリーも含めてのことです。
 とかく行政が縦割りだと不満を感じることが多いようですが、住民側の活動も、ちがう障害の人のことには無関心であるなど縦割りで連携がとれていないように思います。私たちは、さまざまな人が協力することで、可能性を広げることができると考えて活動しています。
 平成11年の荒川区障害者プラン策定に障害者・家族・施設職員など利用者・関係者の意見を反映されるようにと集まった「みんなで創ろう障害者プラン」協議会があふネットの前身です。それまで荒川区では、住民参画で基本構想や基本計画、施策をつくっていくことはほとんどありませんでした。そこに異議を唱えて、障害者プランに住民の声を反映しようと考えて活動してきましたが、やはり不十分なままに終わりました。しかし、障害者プランは策定してからが大事だということ、またせっかく多様な人が集まる場ができたのだから、それを継続していこうということであふネットとして再出発することになりました。
 取り組んでいる課題は、交通バリアフリーのほかに、情報バリアフリー、権利擁護、自立生活、教育、就労などです。


*荒川やさしい街づくりの会の取り組み

 10年あまり前に、車いすの人たちなどが集まって、「荒川やさしい街づくりの会」をつくりました。車いすで外出するのに、一番問題になるのがトレイです。そこで、せめて区内だけでも車いすの人が自由に外出できるように、車いすの人が使えるトイレがどこにあるか調べようということからはじまりました。
 当時は数も少なかったのですが、さらに調べていくうちに、トイレがあるというだけでは不十分だということに気づいてきました。車いすの人が使えるトイレがそこにあるということが知られていないので誰も使わない、そのため倉庫代わりになっているところもありました。また、手動のドアが重い、鍵がかけにくい、手すりが短い、便座が低すぎる、水洗ボタンやペーパーホルダーの位置が悪く使いにくい、鏡の位置が高く車いすからでは見られない、水道の栓が使いにくいなど、さまざまな課題に気づいたのです。そこで、少しずつ行政に対しても改善要望を出してきました。
 一方、当時、会員の中や周囲には、まだ電車やバスなど公共交通機関を使って外出する人はほとんどいませんでした。区内のほとんどの駅は階段ばかりで、エレベーターはおろかエスカレーターや階段昇降機なども整備されていませんでした。そのため、会員の中には、エスカレーターだけでも、階段昇降機だけでもあればいいと考えている人がほとんどでした。
 ちょうど会が結成された頃、地下鉄南北線が部分開通しました。この南北線には、障害者団体の要望もあり、エレベーターがつくことになっていて、たいへん期待していました。しかし、エレベーターはついたものの、JRからの乗り換えから遠く、屋根のないところを長い距離移動しなければならないとか、改札を通らないでホームに行くため、必ず駅員に声をかけないと使えないとか、そのため乗り換え等にたいへん時間がかかるなどの問題があり、希望するものとはかなり隔たりがありました。
 そのうち、荒川やさしい街づくりの会などの要望もあって都電荒川線の20cmあまりの段差が、3〜5cmぐらいにまで解消され、車いすの人やお年寄りにとってとても使いやすくなりました。また、リフト付き(あるいはスロープ式)低床バスも数路線が荒川区内を通るようになり、車いすの人たちの外出範囲が広がってきました。
 そこで、「れくれ」と称して、外出機会を増やし、あわせて公共交通機関の現状を見てもらおうという事業をはじめました。この「れくれ」をきっかけに、公共交通機関を使って、1人ないしは家族や介助者といっしょに出かける人が増えてきました。
 そうすると、いままで、エスカレーターや階段昇降機だけでもあればいいと考えていた人たちが、不満を感じるようになってきました。一般のエスカレーターでは後方に傾くので怖いとか、車いす対応型でも、車いすに人が使っている間、ほかの乗客が使えない、とくにお年寄りなどで階段を上がるのが辛そうな人が使えないのは心苦しいとか、あるいは、時間がかかる、駅員の応対が悪い、周囲の人の好奇の目にさらされる、人によっては嫌みのひとつも言っていく乗客もいるなどの問題が出てきました。また、エレベーターにしても、改札や出口から遠く離れていて、歩くのがしんどい人には何のためのエレベーターかわからない、狭くて車いすの人が二人入れないので、集団で移動するときにとても時間がかかる、先にほかのお客さんがさっさと入ってしまって車いすの人が入れない、鏡の位置が高くて足下が見えない、またエレベーターは自由に使えても最後の電車に乗るときに段差があって駅員の手を煩わさなければならないなどの問題も明らかになってきました。
 いまでは会員の多くは、誰もが使えるということではエレベーターが必要だ、しかもただあればいいというのではなく、どこにあるか、どんなものがあるか、そこに行くまでの案内はわかりやすいかなどが大事だと考えています。
 これは、エレベーターだけに限らず、車いす対応型トイレ、案内などあらゆるものにおいて、細かいところで使い勝手が大きくちがって来るわけで、それが今回の交通バリアフリー基本構想においても重視されました。このような荒川やさしい街づくりの会の活動のほかに、片マヒの人たちや中途失明の人たちの会の活動という下地があって、今回の基本構想でも住民参画につながってきました。
 

*荒川区が交通バリアフリー基本構想策定へ

 平成12年11月に交通バリアフリー法が施行されましたが、この法律で私たちがもっとも重要だと感じたことは、市区町村が重点整備地区の基本構想を策定できるという点でした。
 いままで行政・事業者間の連携がとれておらず、駅や駅周辺の整備でちぐはぐな箇所が数多く見られましたから、この基本構想を通して総合的に整備することが可能になります。また、住民参画で策定するよいモデルになる可能性も考えられました。
 そんなことを考えているときに、荒川区では全国でも早い時期の平成14年3月までにコンサルタント使わないで策定する方向で動き始めました。
 ただ、住民参画で進めるには、1年、実質的には9ヶ月ほどですが、その期間は非常に短いと感じました。それに対応するだけの力が私たちにあるのかという不安もありました。
 しかし、日暮里駅のバリアフリー化が遅れ、かなり利用しにくい状態が続いていたこと、首都圏空港アクセス緊急対策が発表され日暮里駅の総合改善が検討されていること、日暮里・舎人線が乗り入れること、駅前再開発計画が進んでいることなどを考えると、13年度内という短い時間の中での策定もやむをえない、今やらなければ全て後手に回ってしまう怖れがあると思われました。
 そのなかで、できる限りのことをし、荒川区が全国の基本構想策定のモデルになるように、また、これから策定する全国の他の自治体の市民団体の取組みの参考になるようにと願って取り組んできました。
 しかし、短い期間にできる限りのことを詰め込んだということもあり、行政の方だけではなく、障害を持つ人をはじめ、住民側は流れについていくのはかなり大変だったと思います。


*取り組みにあたってのあふネットの姿勢

 基本構想策定にあたって、あふネットは他の障害者団体などとも連携をとってきました。取り組みにあたってのあふネットの姿勢は以下の通りです。

・住民参画を進める
 荒川区では、あふネット結成のきっかけとなった障害者プラン策定に見られるように、住民参画での策定がほとんどありませんでしたので、今後その前例となるようにしたい。・住民参画のあり方単にアンケートに答える、行政の用意した話し合いの場や点検の場に参加するという受け身ではなく、私たち自らが企画し、行政に参加してもらうようにする。また、単に苦情を言うだけではなくどのようなものがいいのか提案できるようにする。

・住民代表の選び方
 策定協議会(委員会)には、単に既存の大きい団体の長だけが住民代表として参加するのではなく、ふだん街づくりや交通バリアフリーに関心を持って活動している団体の人が参加できるようにする。また、策定協議会(委員会)を公開し、関心のある人が傍聴し、策定への動きがわかるようにする。策定協議会のほかに、住民の人が意見を言える機会を設ける。

・より多様な人たちの参加
 法律の名前が「高齢者・身体障害者等」とあるため、どうしても高齢者や車いすの人、視覚障害の人を対象に限定されて考えられがちだが、移動に関するバリアは高齢者・身体障害者だけにとどまらない。車いすの人や視覚障害の人の他にも、聴覚障害や知的障害、呼吸器障害などの内部障害、子ども連れ、大きな荷物を持った人、外国人などのことも考ていく。できるだけ多くの人が参加することで、ある人にとってのバリアフリー化が、他の人にとっても新たなバリアフリーになることが防げる。また、それぞれの立場から意見交換し相互理解を深め、協力することで、よりよいバリアフリー化が進められる。

・情報の共有
 期間が短いため動きについていくのがたいへんなので、策定協議会や懇談会、シンポジウムの様子などを、会報、ホームページを使って、できるだけ早く、また詳しく報告する。それを区民、行政、区議など関係者に配り、情報の共有に努める。

・荒川区との連携
 荒川区の担当部署との密接に連携をとって進めていくことで、効果的な取り組みができる。また、お互い足りない点を補って進めていく。

・策定後の住民参画の保障
 基本構想策定までが短いので、自分たちの意見を行政や事業者に十分に伝えきれない怖れがある。策定後の事前調査、設計、施工、評価の各段階で、行政・事業者を意見交換し、利用者の声を反映できるシステムを確保する。


*あふネットの実際の取り組み

 あふネットの実際の主な取り組みは以下の通りです。

・住民参画
 区の実施したアンケートとは別に、あふネット独自でもアンケートをとり、シンポジウムの資料として、また会報で報告した。策定協議会には、あふネットのほか、荒川やさしい街づくりの会、片マヒの人たち、中途失明者の人たちの会など、既存の障害者福祉団体以外から街づくりに関心のある人たちが代表として参加した。また、会議は公開され、あふネットの関係者などが傍聴した。
 区主催の懇談会には、あふネットのほか上記の団体の方たちなどが毎回参加した。
 あふネット主催の勉強会・意見交換会としては、あふネットセミナー9「交通リアフリー法と基本構想」で、交通バリアフリーに関わってきた障害者当事者の講演と荒川区からの進捗状況の報告、区内各障害者の意見発表、意見交換を行った。また、あふネットセミナー11「荒川区交通バリアフリー基本構想意見交換会」は、第2回懇談会として荒川区と共催し、JR、京成、新交通、東京都建設局、荒川区道路課など交通事業者・道路管理者にも出席していただいた。

・区民参画プロジェクト
 あふネット独自の点検評価活動として、区民参画プロジェクトと題し、重点整備地区の日暮里駅。駅周辺の点検活動を5回行い、それぞれを会報で報告した。
 また、基本構想の資料の中にも入れていただいた。

・区長と歩くバリアフリーチェック
 区長と障害者、高齢者、子ども連れなど約50名の方が参加して、日暮里駅と駅周辺の状況を点検し、そのあと意見交換をした。

・区議会に陳情書提出
 荒川区交通バリアフリー基本構想策定推進に関する陳情書を荒川区議会に提出した。主な内容は、
1.荒川区議会も交通バリアフリー策定を推進するように努めること。
2.策定に際し、障害者や高齢者など利用者の参画が保障されること。
3.基本構想の内容が実現するよう予算を確保すること。
4.日暮里駅周辺以外の地域においても、バリアフリーの街づくりを推進すること。
 建設環境委員会での審議を経て、本会議で満場一致で採択された。

・会報・ホームページ
 上記の活動などを会報とホームページでできるだけ早く、詳しく報告するように努めた。またそれを区内各所において、一般の人も読めるようにしたほか、
 区役所や区議に配って、情報の共有とPRに努めた。

・基本構想(ダイジェスト版)の音声版、点字版作成、朗読や点字ボランティアの方たちに協力していただいて、基本構想ダイジェスト版の音声版・点字版を作成した。


*反省点

 基本構想策定にあたっての反省は以下の通りです。

・時間が短い
 なにぶんにも時間が少なく、関係者は策定の動きについていくのがたいへんだった。とくに視覚障害・聴覚障害者は、情報保障の配慮が足らず、ついていくのがさらにたいへんだった。

・情報保障が不十分
 資料が墨字のみで、点字・音声などの資料が不足していた。音声化に時間がかかり、視覚障害者への連絡・報告が遅れ気味になった。

・意見集約の不足
 視覚障害・聴覚障害など情報障害者の場合、資料の出し方、コミュニケーションのとり方を工夫する必要があるため、障害別の説明会、意見集約の機会の必要性も感じた。。交通バリアフリーばかりを考えていて、情報バリアフリーへの取組みが不足していた。

・不十分な住民参画
 荒川区もあふネットも策定そのものに精一杯で、PRまで行き届かなかった。

・提案・専門性の不足
 住民の声がまだ単なる愚痴や文句に終わることが多く、なかなか実際につくるための建設的な提案にはならなかった。また、専門的なアドバイスを受けるためのつながりが弱く、それだけの材料も知識も不足していた。そのため自分たちの考えを図や模型などわかりやすい形にして伝えることができなかった。

・案内等への取り組み不足
 エレベーターや点字ブロックなど、目に見える物理的なバリアフリーにとどまり、高齢者や知的障害者、外国人などを含めた、誰にもわかりやすい案内・表示についての取り組みがほとんどできなかった。


*今後の取り組み

 基本構想の中の各事業の整備プログラムは、大まかなものを示したものにすぎず、書かれていることが必ず実現されると保障されているわけではない。予算の状況によって延期されたり、中止されたりする怖れもある。また、細かいところの使い勝手は、今後の設計・施工の段階で決まる。そのような点については、実際の利用者でなければわからないことも多く、また点検した結果を生かすためにも、設計・施工の段階で、利用者の意見を反映できるように取り組んでいきたい。また、これまでの取り組みが物理的なバリアフリー化にとどまってしまったため、今後は高齢者・視覚障害者、知的障害者、外国人などにもわかりやすい案内表示などの利用しやすさにも取り組んでいきたい。

       以上



はじめのページに戻る


協力 バスから地域交通を考える会